大学で医療事務を学ぶということ
~『診療報酬請求ハンドブック』とともに

学科教員の伊藤嘉高です。大学で医療事務を学ぶことの意義はどこにあるのか―過去記事(その1その2)でも触れたように、単に診療報酬の請求をするだけでなく、病院経営を支える人材になるための実力を磨くことにあります。

では、具体的にどのように医療事務の勉強を行っているのでしょうか。今回の記事では、診療報酬請求事務に焦点を当てて、紹介していきます!

(画像:本学科で用いている『診療報酬請求ハンドブック』)

通信教育のテキストを見てみると、ひたすら診療報酬の個別の点数と算定方法が羅列されています。医療事務とは、「○○は××で△△の場合に算定できる」といったことをひたすら覚えるか、ミスしないように練習を重ねることが、唯一の勉強方法だと思えてしまいます。

(とはいえ、ソラスト社さんのテキストは強くオススメできます!)

しかし、テキストの字面だけを追いかけて、丸暗記や機械的暗記に励むだけでは、応用力はつきません。応用力とは、たとえば、診療報酬改定に対応し、病院経営のシミュレーションができる力であり、昨今の現場で強く求められている能力です。

応用力の土台となる「“なぜ”と思う力」

応用力をつける上で、大切なことは、「なぜ○○は××で△△の場合にしか算定できないのか」といったように、「なぜ」と疑問に感じることのできる知的好奇心です。

そして、「なぜ」のレベルから診療報酬が理解できると、丸暗記などせずとも、算定要件は頭に入っていきますし、算定ミスもなくなります。

たとえば、基本診療料のレベルで言えば、外来管理加算が算定できない条件や、200床以上の病院で外来診療料が設定されている理由や、特定疾患療養管理料が算定できない理由は、「診療報酬による医療機関の機能分化の誘導」という点から理解できます。

また、複再・複外診や、その際の外来管理加算の扱いのややこしさについても、「診療科が分かれているのは、医療機関の都合によるものであり、それで患者が不利益を被ってはならない」という基本理念を理解すれば、すんなりと理解できます。

もちろん、こうした話に踏み込むと、学生によっては、「そんなややこしい話はいいよ。ただ覚えればいいんでしょ」という反応が返ってくることもあります。

しかし、このように物事を抽象化して理解する力こそが、医療事務に限らずあらゆる専門職種に求められる応用力の土台をなしています。そして、4年生の大学である以上、しっかりと磨く必要があると考えます。そこで、学生にはグループワークや記述式の課題などで負荷を課しています。

この訓練は、学生の将来にとって決して無駄にならないはずです。

ハンドブックで資格取得も万全!

とはいえ、大学では、基礎医学や臨床医学も深く学びますし(これもまた、診療情報管理士のみならず、専門的な医療事務にとっては必須の知識です)、ITや経営(組織論や心理学を含む)の勉強もしなければならず(本学科には各分野の専門家がそろっています!)、学習の時間は限られています。

そこで、私たちが用意したのが『診療報酬請求ハンドブック』です。本書は診療報酬点数表に収録されている各診療項目について、頻出項目を分かりやすくまとめたものです。

ただし、これだけであれば、類書で足ります。

ハンドブックでは、さらに、資格試験の実技試験でも出題される可能性はない項目も取り上げています。上で述べたように、点数表を体系的に理解するために、講義で役に立つからです。さらに、診療報酬請求事務能力認定試験を念頭に、皆さんがミスなく手早く引く際の助けとなる解説も付しています。

(画像:『ハンドブック』より)

あらゆる勉強がそうであるように、一夜にして体系的な理解を築くことはできません。そのためには繰り返しの学習と演習が不可欠です。

しかし、それは、項目をミスなく手早く引けるようになるための機械的な演習ではありません。あくまで、体系的な理解を築くための知的な演習でなくてはなりません。

『ハンドブック』は、そうした知的な演習に取り組み、実力をみがく学生の皆さんを強力に支えます。

※なお、本書は、学生の経済的負担を考えて、必要部数だけを印刷し、市販もしないことで、販売価格を抑えています。