大学でなぜ医療事務を学ぶのか
~派遣、委託、パート頼みの病院経営の限界!

医療事務について詳しくない方は、「大学の学部で医療事務を学ぶ」と聞くと、こう思われるかもしれません。

大学で医療事務を学ぶ必要はあるの? 専門学校もあるし、通信教育のコマーシャルだってやっているし。数か月もあれば資格が取れるらしいし、給料も安いのでは?

しかし、そこには大きな誤解があります。医療事務と一口に言っても、さまざまな職種があり、一括りにはできないのです。

この記事では、医療事務に対する誤解を払拭してもらうために、高度な病院事務職(総合職)の今日的な存在意義を解説します。

さらに本学科でも、こうした高度な医療事務職は、卒業後の有力な進路の一つになっていることから、大学の学部教育で医療事務を学ぶことの意義もお伝えしたいと思います。


医療事務=受付や会計の仕事?

まず、患者さん側からみると、医療事務とは、受付や会計にいて患者さんに応対する人のことであり、もしかしたら「誰にでもできる仕事」に見えるかもしれません。

実際に、大病院であるほど、そうした職種は、派遣やパートの人材が担っていることが多く、待遇も決して良いとは言えません。

(したがって、本学科の卒業生の就職先にはなり得ないのですが、近年は、これらの仕事についても、その重要性が認められ、正職員化の動きが見られます。)

医療事務=診療報酬請求事務

しかし、業界内では、「医療事務」と言うと、通常は「診療報酬請求事務」のことを指します。「診療報酬」とは診療に対する対価のことで、たとえば、「初診料」や「処方料」、「手術料」などです。

これらの対価は、各医療機関が自由に決めることができず、すべて国が「診療報酬」として、事細かに定めています(美容整形などの自由診療の場合は除きます)。

したがって、患者さん(や医療保険の組合)に診療費用を請求する際には、この診療報酬に関する専門知識が不可欠となります。そして、この業務を担うのが「医療事務」なのです。通常は受付の奥にある「医事課」で勤務しています。

とはいえ、この診療報酬請求を行うには、本来は医師が記すカルテを読み込み、ひとつひとつの診療報酬に落とし込んでいく必要があるのですが、IT化により、かなりの部分が自動化されるようになっています。

そこで、診療報酬請求事務についても、「そこまでの知識は必要ないだろう」とうことで、パートや派遣、委託に頼る病院(とりわけ自治体病院)が多数を占めるようになりました。

医療事務の資格も民間資格が乱立しており、最難関である「診療報酬請求事務能力認定試験」を除けば、そうしたコンピュータ任せの仕事をするのに最低限必要な知識とスキルを評価する程度のレベルにとどまっているのが実情です。

(これらの資格試験に合格するには、個々の診療行為の中身を理解している必要がなく、丸暗記のレベルで十分なのです。したがって、高度な仕事をするには、資格を取得するだけでは不十分です。

逆にいえば、現場で活躍されている方々のスキルを正当に評価できるような高度な認定試験が必要とも言えます。)

診療報酬請求事務から病院事務総合職へ

しかし、2000年代に入り「医療崩壊」の言葉が聞かれるようになった頃から、「委託や派遣、パート任せではまずい」ことに気づき、自治体病院でも、正規職員としての病院事務職(総合職)を本格的に採用し育成する先進的な病院が立ち現れてきました。

(ちなみに、本学科は、そうした時代の要請のなかで2010年に開設されました。)

そうした病院事務職(総合職)には、多くのことが求められます。まず、診療報酬請求の知識のスキルとともに、診療情報管理士、さらには、医師事務作業補助者(医療秘書、ドクターズクラーク等)の資格と職能です。

これらの職務は、下図のように、経営(診療報酬)を軸にすべて密接につながっているからです(詳しくは改めて)。

医療事務と診療情報管理士と医師事務作業補助者の関係

「医は仁術」とも言われますが、経営抜きには医療は成り立ちません。そして、多くの診療報酬は人員等の体制の充実を要件としていることから、先進的な経営を行う医療機関は、それだけ体制も充実しており、「医療の質」も高くなっていると言えます。

加えて、病院総合職には、病院経営に資することのできる知識とスキルが求められます。

つまりは、表面的な診療報酬の知識だけでなく、診療報酬の表と裏を読み解く力を有し、カルテを読みこなす医学・医療知識を十分に備え、さらには、診療報酬や診療情報に関する膨大なデータ分析を行うことのできるITスキルと経営のスキルを兼ね備えた人材が求められているのです。

「医療×IT×経営の複合的なスキルを自由自在に身につける」ことをうたう本学科が養成する人材のひとつが、こうした病院総合職です。

そして、診療報酬請求事務や診療情報管理など、それぞれの専門職種についても、医学・医療や他職種のことを十分に理解した専門的な人材が活躍しています

これらの知識やスキルについては、本学科の場合、すべて体系的な教育カリキュラムのもとで学ぶことができますが、もちろん、入職後にも身につけていくべきものです。その点でいえば、大切なことは「積極的に学ぶ姿勢をいかに身につけるか」です。

したがって、自分で勉強する姿勢がすでに身についている方は、大学に進学しようが専門学校に進学しようが、就職後は十二分にやっていけるはずです(給与の違いには注意が必要ですが……)。

次の記事では、本学科の学生の意欲の高さをお伝えします。すでに各地の医療機関で活躍されている医療事務職の方々 (大学卒であろうと専門学校卒であろうと関係ない!) をみならって、そして、医療事務職のさらなる地位の向上(=医療の質の向上!)に向けて、皆で切磋琢磨してきましょう!