学科教員の伊藤嘉高です。私の担当科目は、後期からすべて対面授業となり、ようやく1年生とも直接顔を合わせることができるようになりました。前期で学生の皆さんとともに身につけたICTツールも活用しながら、例年以上に学生同士の交流が生まれるような講義を行っています!
この記事では、後期からの対面授業の課題を探るために、前期のオンライン授業(オンデマンド授業)について、学生からの授業評価とともに振り返ってみたいと思います。
今回振り返るのは1年生の「医療事務総論」です。この講義では、eラーニングのプラットフォームであるmoodleを利用しました。moodleでは、授業動画や授業資料の投稿、課題の提出と管理、テストの実施と管理などが同じ画面で行うことができます(下記画像)。
そこで、このmoodleに毎回90分の講義動画(さらに、単元ごとに分割)を用意するとともに、個別課題の提出とグループワーク課題の提出を求めました。ただし、学生同士が双方向で議論を行いながらグループワークを行うのにmoodleは向いていません。
基礎ゼミ単位でのグループワーク課題
それでも、グループワーク課題を基礎ゼミ単位で取り組んでもらいたいと考えていました。基礎ゼミは、1ゼミあたり6名程度で開かれる1年次のゼミ活動であり、「仲間」として助け合う関係が築ける貴重な機会なのですが、今年はオンラインでの開催となったため、イベントなども開けず、十分な関係が築けないおそれがありました。
ただし、上記の通りmoodleには限界があるため、Microsoft Teamsにゼミごとのチャネルを用意して、ビデオ会議やチャットを活用して、グループワーク課題に取り組んでもらうことにしました。
このグループワーク課題には、以下の3点の教育的効果を狙っていました。すなわち、(1)学業で助け合える仲間を作るきっかけを増やすこと、(2)学生同士で議論することで授業内容に対する理解が深まること、(3)他人同然のメンバーと議論をする経験を積むことです。
Microsoft teamsでも学生と教員が交流
さらに、各課題に対するフィードバックや授業の質問に対する回答についても、Teamsで共有をはかり、欠席者に対しても個別連絡などで対応を行いました。
その結果、ほぼすべての学生が昨年以上の理解度に達しましたが、残念ながら、再試験の対象者が出てしまいました(昨年は0名)。ただし、定期試験はmoodleで行ったため(ランダム出題形式)、再試験も同じ問題で満点が出るまでチャレンジしてもらうとともに、さらに個別で口頭試問を行い、定期試験時の回答を画面共有して、解けなかった問題について現在の理解度を確認しました。
こうして、オンラインでも効果的な指導を行うことができました。
授業評価の結果から見える課題
このほかにも、中間授業アンケートも含め、さまざまな工夫を行いましたが、その分、学生には通常以上の負荷をかけたため、授業評価は低くなるのではないかと想定していました。
ところが、結果は昨年とほとんど変わらず、半数以上が「大変満足」で、残りが「満足」でした(残念ながら、1名のみネガティブな評価がありました)。これは、本学科の平均的な授業評価と同様の分布です。
ネガティブな評価の背景を探るべく、自由記述を見てみると、「毎回あるグループワークが大変だった。親交も深まってない中で回答を合わせるのは難しかったし、グループの中で一回も意見を出してくれない人もいた。」というものでした。これは、想定の範囲内であり、むしろ、大変だからこそ成長できると考えてほしいと思います。
ただし、「グループの中で一回も意見を出してくれない人もいた」については問題です。メディア授業の限界として甘受しなければならないと考えていましたが、私が情報収集した範囲内では、そうした学生はごく一部に留まっていました。
ただし、私は、そうした学生を「不真面目だ」と責めたりはしません。どこかでボタンの掛け違いがあったのだと考えたいのです。メディア授業ではその機微に気づくことができず、十分な対応もできませんでした。この解決が、後期の対面授業の課題です。
ポジティブな学生の声がぞくぞくと
ただし、もちろんのことながら、前期のグループワーク課題に対しては、以下のように評価する声がたくさん寄せられました! とても頼もしく感じています。
個別課題に加え、グループワーク課題もあるため、自分が分からないところが分かったり、自分から教えることもあるので知識が定着していると実感できます。
オンライン授業で会うことができない中、グループワークでゼミのメンバーで協力して課題を解くということができてよかった。
自由回答では、上記のような「メディア授業の工夫を評価するもの」が最も多く、「講義の分かりやすさ」を評価するもの、「自分で考える学びの楽しさ」を評価するもの、「難しいがやりがいがあること」を評価するものが続きました。
一番うれしかったのは、「先生の熱意がとても伝わった。先生が頑張って授業をしてくれている分、自分も答えなくてはいけないなと思った。オンライン授業ということを一番感じさせなかった。」という意見。ありがとう!
学生の頑張り(集中しづらい環境をどう乗り越えたのか)については以下の記事をご覧ください!
おわりに
「これが正解だ」という講義はないと思います。それぞれの講義に、よいところもあれば、悪いところもあるはずです。そうしたなかで、私は、あくまで、「水を飲ませて喜ばせるのではなく、水の飲み方をしっかりと教える」講義に徹したいと考えています。
私の面倒な講義に頑張ってついてきてくれる学生がいて、そうした学生に教えられること―これが教員としての一番の誇りです。すべての学生が、頑張って勉強している自分を誇りに思えるような講義を目指していきます。