診療情報管理士認定試験過去問対策を超える問題集(基礎・医学編) ~全13学科のなかでいちばん病気に詳しくなる!

医療情報管理学科の目指す資格の一つに「診療情報管理士」があります。診療情報管理士は、病院の運営や医療の管理に欠かせない専門職種ですが、直接患者さんと関わる機会は多くないため、医療関係者以外にはあまり知られていません。

診療情報管理士の業務と専門性

診療情報管理士の主な業務は、カルテなどの診療記録が正しく記載されているかをチェックした上で、その内容を踏まえて、患者さんを国際基準の病名によって分類することです。さらには、診療のデータを整理し、他の職種からの依頼に応じて、さまざまな統計を作成します。また、診療情報管理士による病名の分類は、入院医療費を計算する際にも欠かせません。

したがって、診療情報管理士には、病気に対する幅広い理解と深い知識が求められます。直接患者さんの治療を担当するわけではありませんが、正しくカルテを管理し病名による分類を適切に行うためには、一つひとつの病気のメカニズム(どこに異常が生じており、どのような症状がどのように生じ、どのような検査が必要になるのか、どのような治療法がどのように作用するのか)に関する正確な理解が欠かせません。

診療情報管理士テキスト(基礎・医学編)の問題点

診療情報管理士の認定試験は(1)基礎・医学編と(2)専門編に分かれており、病気に対する理解が問われるのは主に(1)基礎・医学編です。(1)基礎・医学編の対策は大変だと言われていますが、実際に出題される問題に難問・奇問の類はなく、丸暗記せずとも、一つひとつの病気のメカニズム(機序)を理解しておけば、十分に対応できる問題ばかりです。

(写真:合格者体験記もご覧ください!)

ところが、基礎・医学編の公式テキストは、膨大な数の病気について、何と1冊のなかにコンパクトにまとめています。したがって、そうした病気のメカニズムについてはほとんど触れられていません。たとえば、溶血性貧血については次のように整理されています。

溶血性貧血

【特徴】
赤血球の寿命が短縮するために生じる貧血。多くの疾患があるが大別すると、以下の二つになる。
1)赤血球自体に欠陥のあるもの……大部分が遺伝性(発作性夜間血色素尿症は後天性)
2)赤血球の環境の以上によるもの……後天性疾患

【症状】
1)貧血
2)黄疸
3)脾腫

【検査】
1)貧血:正球性正色素貧血。網状赤血球の著増。
2)骨髄:赤芽球過形成。
3)赤血球寿命の短縮。
4)血清ハプトグロビン減少、間接ビリルビン上昇、LDH値上昇。
5)尿所見:血管内溶血ではヘモグロビン尿、ヘモジデリン尿を認める。

【治療】
各病型により異なる。

(さらに、溶血性貧血の分類を示す表(名称のみ)が続く。)

日本病院会『診療情報管理士テキスト 診療情報管理I~基礎・医学編』(第8版、p.331)

病院事務の経験者の方であれば、十分にイメージができて理解できたとしても、一から学ぶ学生の場合は、そうはいきません。このような説明だけでは、「どうして黄疸が生じるのか」、「なぜ正球性正色素貧血なのか」、「骨髄:赤芽球過形成とはどういうことなのか」などなど、何もわからず、疾患のイメージができず、丸暗記ですませようとしてしまう傾向が出てきてしまいます(極端な場合は「溶血」の意味も理解していない!)。そんな勉強は苦痛でしかないですよね……。

それでも、丸暗記の資格対策勉強で認定試験を合格できることもあるでしょう(とくに過去問が蓄積されている学校ではなおさら!)。しかし、そうした丸暗記型で覚えた知識は、すぐに忘れてしまいます。果たしてそれが自分の人生を支える土台になるといえるでしょうか。

資格対策を超える問題集~人生を支える勉強法を身につける

もちろん、本学科の普段の授業では、医師免許を有する複数の教員が丁寧に教えています。しかし、時間も限られているため、すべての病気について時間をかけて説明するわけにはいきませんし、自主的な復習も必要になります。

そこで、卒業後も着実にキャリアを形成していくため(卒業後の勉強も丸暗記型にしないため)には、1年生のうちから、基礎的な医学用語を正確に理解し(「炎症」について正確に説明できますか?)、一つひとつの病気のメカニズムを自主的に勉強して学び取っていく姿勢を身につけることが必要です。

しかし、ただ「勉強しろ」と言われても、このようなテキストだけでは、途方に暮れてしまいますよね。人間のやる気は、その人の心のなかから自然にわき上がってくるものではありません。適切な学習環境があって初めて人は学ぼうとすることができます(もちろん、個人差はありますが)。

大学は、単に一方的に知識を伝達すればよいのではなく、一人ひとりの学生に対して適切な学習環境を提供する責務があります。そこで、私たちの学科では、従来の授業や資格対策に加えて、今年度から、1年生から自主的に学習が進められる「詳しい解説付きの演習問題集」をウェブアプリ&PDFで提供することにしました(さらに書籍版の準備も進めており、2022年度から提供します→出版社サイト、「まえがき」はこちら)。

すべての疾患について5肢択一の形式で「誤っているもの」を選ばせる問題を用意しており、この問題集に取り組むことで、疾患のイメージができて、それぞれの選択肢の背景にどのような仕組み・機序があるのかが理解できているようになっています。そして、このような勉強法を1年生から実践することで、知識がつながっていき、記憶も定着しやすくなり、勉強の楽しさが実感できるようになります。

たとえば、上述の溶血性貧血については以下のようになっています。

【問題】
溶血性貧血について、誤っているのは?

a. 赤血球の寿命が短縮するために生じる
b. 網状赤血球の減少がみられる
c. 症状に貧血、黄疸、脾腫がある
d. 間接ビリルビンが上昇する

(▲それぞれの選択肢は、疾患理解にとって重要であったり、管理士試験で出やかったりするものです。とくに誤っている選択肢は、管理士試験でよく出題されるものです。)

【正答】
b.

【解説】
・溶血性貧血では、成熟する前の幼若な赤血球である網状赤血球が増加する(溶血により骨髄での赤血球造血が盛んになるため)。

(▲ここに書いてあることが理解できれば、疾患の基礎理解ができており、問題も解けます。ただし、「溶血」などの用語の知識がなければ、この解説を読んでも理解が難しいと思います。そこで、さらに、以下のように理解するために必要な用語解説も付しました。)

【参考】(理解を助けるための参考知識!)
・溶血:血管の中を流れる赤血球が破壊されること。破壊された赤血球中に含まれるヘモグロビンが血清・血漿中に出て血清・血漿に赤みがかかる。
・間接ビリルビン:赤血球が古くなって壊れるときに出てくるビリルビン(黄色い色素)。血液中に間接ビリルビンが大量に発生すると、黄疸が発現する。肝臓で作られるビリルビンを直接ビリルビン、肝臓以外(血管内とか)で作られるビリルビンを間接ビリルビン、とざっくりと覚えるとよい。
・脾腫:赤血球は主に脾臓で壊されるため、脾臓が腫れる。

『診療情報管理士になりたい人のために―基礎科目(臨床医学)解説付き問題集』p.261

(▲正球性正色素貧血であることについては、貧血分類の問題で別途、解説を入れています。さらに、高校生物基礎の知識が定着していない方向けに、貧血の定義や、骨髄、黄疸、脾臓、血清、血漿、赤血球、ヘモグロビンなども別の問題ですべて用語解説を入れています!)

学生の皆さんには「全13学科の中で自分たちが一番病気に詳しくなる!」という気概で取り組んでほしいと思います。「診療情報管理士の試験は合格して当たり前」という高いレベルで学習を進めましょう。この勉強方法の習得は、たとえ医療系以外の分野に進むにしても、あなたの一生を支えてくれるものになります!

書誌情報

井上弘樹・伊藤嘉高, 2022,『診療情報管理士になりたい人のために―基礎科目(臨床医学)解説付き問題集』ウイネット(473ページ、4,500円+税)

本書は本学での買取のため、出版社には在庫がありませんが、何部かは外部の方にもお分けできます(外部の方にお分けできる在庫もなくなりました)。詳しくは出版社サイトをご覧ください。サンプルもあります。


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