本学科の学生たちも参加した国際ユースフォーラムが、ロシアの極東医科大学で開催されました(2019年10月)。現地で英語のポスター発表を行ってきた3年生にインタビューしました!(別の学生さんの記事もあります)
―まずは、ポスター発表するまでの経緯を教えてください。
柴山先生に声をかけて頂いたのがきっかけです。柴山先生のことは、経営学の講義やオープンキャンパスを通して、とても親しみやすい先生だと感じていたので、それまでも、折に触れて研究室に出入りさせて頂いていました。3年生になって、いつものように柴山先生の研究室を訪ねたときに、柴山先生から「ロシアに行ってみないか」とのお誘いを受けました。
そこで、さっそく、窓口になっている石上先生の研究室を訪ねました。当時の私は、ロシアの医療についてまったく知識がありませんでしたが、石上先生から、近年、医療水準の向上により、とりわけ乳児死亡率が減少しているといった話を伺い、興味を覚えました。
それまで、ロシアに対するイメージは、歴史の勉強やテレビを通して得たものしかなく、必ずしもポジティブなものではありませんでした。ところが、そうしたイメージとは異なる話をさまざまに伺うなかで、実際に、自分の目で見てみたいと思うようになりました。
それに加えて、私は、元々、海外に興味はありましたが、部活(陸上部)を中心に据えた生活を続けていたため、海外に出るチャンスがなく、「イメージにとらわれることなく、新たなものに目を向ける」よい機会にもなると思い、手を挙げることにしました。
―限られたチャンスをつかむ準備ができていたのですね! では、発表までの準備と発表の内容について教えてください。
石上先生から先方の大学の講義資料を見せて頂いたところ、母子保健が扱われていました。そのなかで私の目にとまったのが、合計特殊出生率のデータでした。ロシアでも少子化が進んでいたものの、ここ数年、上昇に転じていました。
日本でも、少子化が進んでおり、さまざまな政策が打ち出されているものの、上昇には転じていません。そこで、両国の政策を比較することで、日本の医療政策を捉え直すことができるのではないかと考えました。
調査を始めてみると、日本とロシアの大きな違いとして、ロシアでは、2007年から「母親資本」制度が始まっていました。母親資本制度とは、第二子を産むと、45万ルーブル(日本円で100万円弱)が支給されるというもので、使い道は育児に限定されています。さらには、7歳未満の子どもの保育が無料であったりするなど、金銭的支援の充実ぶりが分かりました。
これは私の考えになるのですが、これらの支援は、単に金銭的な面にとどまるものではなく、親の精神的支援にもなっていることが大きいと思います。日本では、いまだに結婚したら子どもを産むのが当たり前という価値観がありながらも、出産・育児に対する社会的なサポートは十分だとは言えません。
だからこそ、私の周りでも結婚そのものを負担に感じる人たちがいます。その意味で、母親資本制度のような支援策は、私たち若者にとって、「安心して、結婚できる」という強いメッセージを発するものであると思います。未婚率の増加に対応するためには、「出会いの場」を作ることよりも、出産・育児に対する社会的な支援を充実させることの方が、私たちにとってはインパクトがあります。
もちろん、これらの政策が婚姻率や合計特殊出生率の上昇につながったことを示す直接的なデータがあるわけではありません。しかし、日本とロシアを比較することで、日本の子育て支援策の不十分さを浮き彫りにする発表を行うことができました。ロシアの現状を知ることを通して、ロシアのイメージが変わるだけでなく、自分の身近な日本についても、違った角度から捉え返すことができました。
発表自体は、慣れない英語でポスター形式で行いましたが、大学院生の先輩方の口頭発表を聞いていると、自分も口頭で発表したいという気持ちになりました。より多くの人に自分の研究を伝えたいという気持ちが強くなったからです。来年以降、海外で発表される方は、ぜひチャレンジしてほしいです!
―ロシアには5日間滞在されたとのことですが、現地の印象はいかがですか。
とにかく人が優しかったです! 到着した日の夜に、びくびくしながら、コンビニを探しに外出しました。ミネラルウォーターがほしくて……、無事にコンビニに着いたのですが、ロシア語だけの表示だったので、炭酸入りかどうかが分からず困ってしまいました。そうしたら、近くの学生が声をかけてくれました。
その学生は英語ができなかったのですが、代わりに英語の通じる店員を呼んでくれました。その店員さんもこわもての方でしたが、とても丁寧に、炭酸入りとそうでないものを教えてくれて、しかも、私たちが日本から来たことが分かると、日本のことについて聞いたりもしてくれました。大学内でも、現地のたくさんの学生に助けてもらう場面がありました。
ご飯は香辛料が強く、独特の味わいのものが多く、日本から持参したレトルトの雑炊などに頼る日もありました。もちろん、ボルシチなどとてもおいしい料理もたくさんありました。
発表後に、大学の附属クリニックを見学させてもらいました。1800年代の建物が改修されて使われており、衛生面が気になりましたが、処置ごとに処置室が分かれており、ある程度、プライバシーが確保されている点が、日本と異なっていました。
ドクターについても、病院のウェブサイトにレビューがあり、どのドクターを希望するのかを患者が選択できるようになっていました。確かに、相性のよいドクターであれば、自分の症状が伝えやすかったりもしますよね。もちろん、患者が医療の質を評価することはできないといったことを考えると、良し悪しはありますが……。医療システムも国によって「当たり前」が違うことを実感しました。
―研究発表以外でも様々な経験をされたようですね! では、最後に後輩へのメッセージをお願いします。
研究発表することについて、そこまで気負わなくても大丈夫です。研究を進めていくと、どんどん興味が増して、調べたいことが増えていきます。ですから、最初は、「ロシアに行くついでに研究しよう」ぐらいの気持ちでも構わないと思います。
まずは最初の一歩を踏み出すことが大切だと思います。自分にないものを自分の人生に取り入れていくという姿勢を身につける大きなきっかけになるはずです。不安なことがあれば、何でも聞いてください!